2007/09/29

オシム監督が伝えたかったこと

プロジェクトを進めていると「ラクだなぁ」と感じる時があります。

それはプロジェクトマネジメントのスキルや経験を使っていない時です。

これはどういう意味か?

サッカーを例に説明してみます。
味方からボールをもらう瞬間の話です。

周りの味方から「相手が2人寄せてきているぞ!」という声が聞こえてきました。

こんな時に、私は「ラクだなぁ」と感じます。

もし周りの声がなかったらどうなるか?

まず自分がフリーなのか周りを確認しないといけません。
2人が寄せてきているので、ボールをとられないキープ力が必要になります。

そして体を寄せられても倒れない強靭な体が必要になります。

つまり味方の声を聞いていれば、ダイレクトでパスを出して終わりの話なのに、味方の声がなかっただけで、これだけのスキルが必要になってくるわけです。

スキルは一朝一夕で身に付くものではありません。
もし確実に次のプレーにつなげたいと考えれば、声だしは大切になってきます。

では、仕事における声だしとは何になるか?

個人的には「コミットメント」、これに尽きるかなと思います。

プロジェクトで言えば、「目的・目標の達成にコミットメントしているか?」

私が尊敬している仕事の先輩方は、このコミットメントを基に活動していました。
そのため、時には嫌われ役、汚れ役も担っていたりします。

国や文化が違う方と話をすると、「日本人は責任感がない」、「コミットメントしない」と言われることがあるのですが、このような時は、ボールを受けて次のプレーに繋げてはいるが、味方に対して声を出していない状態かなと思います。

勤勉だけど、責任感がない。
(スキルは持っているけど、コミットメントしない。)
(自分の仕事は確実にこなすけど、無関心。)

この状態の危険な所は、言い訳ができてしまうことです。

個々のプレーを見れば、自分はベストを尽くした・・・問題ないじゃないとなりがちです。
(ちゃんとボールを取られずにパスしているじゃん・・・と自己弁護できるわけです。)

したがって、今回は運がなかったんだ、次がんばろう・・・とお互いを慰めることも可能です。

資格も取得して知識が豊富、常に勉強を欠かさずスキルもたくさん保有している・・・そんなベテラン社員より、何も持っていない新入社員の方が貢献している時は、声だしをしているかしないかの差だったりします。
(つまり経験や実績で全てが決まるわけではないってことですね。)

ビジネスパーソンとしてのスキルアップを考えた時に、力を入れてしまうのは、ボールのキープ力や強靭な体作りになってしまうと思います。

当然と言えば当然なのですが、声出しはスキルではなく、意識の問題だからです。

選手個人のスキルアップを行いつつ、試合では「勝つこと」を目標に声だしをする。
つまりどれだけ「勝つこと」にこだわっているか(=コミットメントしているか)が勝敗を分けるキーポイントになったりします。

このような違いに気付き、前職で自分のキープ力や強靭な体を褒められた時は、素直に喜んでいたのですが、最近褒められる時は、チームが声だしをしていないのではないか、コミットメントができていないのではないか・・・と注意するようになりました。

ということで、今回このような話を書いたのはオシム監督のコメントをまとめて読んだからです。
監督のコメントの傾向を追ってみると、こんなことが言いたいのかなと思いました。

ドーハの悲劇の頃の日本代表には入り込め愛着もあるのに、最近の代表にはそこまで強く入り込めないのは、この勝敗に対するこだわり、試合に勝つというコミットメント勝ちへの執念・執着がドーハの頃よりも弱いと感じるからかもしれないですね。

そして個人的に、今回の話を忠実に実践している選手はヤンキースの松井選手だと思いました。
ヤンキースの松井選手は、サッカーは上手くないかもしれませんが、サッカーチームに入っても貢献しそうですね。

2007/09/28

iPhoneを触る

ちょっと機会があって、appleのiPhoneを触りました。

とにかく凄いですね。
文章でうまく表現できないのですが、触った時の驚きはなかなかのものです。

最近、ゲームニクスという本を読んだのですが、ここで書かれている直感的な操作や、はまる演出と段階的な学習効果などが随所に盛り込まれて、触る度に唸ってしまいました。

ゲームニクスとは何か―日本発、世界基準のものづくり法則 (幻冬舎新書 さ 3-1)
サイトウ アキヒロ
幻冬舎 (2007/07)
売り上げランキング: 5679
おすすめ度の平均: 3.5
3 ゲームから学ぼうと言う姿勢は良い
3 いい指摘だけに、瑕疵も目立ってしまう
5 Web2.0より実際的。



日本でも早く発売してほしいですね。

このような機械に触れると、商品を提供する際にどのような点に注意して製作すれば良いか、何となくわかるような気がします。(なかなか言語化ができませんが・・・。)

ということで、常日頃から「使っていて心地の良いもの」をできるだけ自分の回りに置いておこうと思っています。
心地よいものを置いておくことで、多くの人が喜ぶツボみたいなものを感じ取ろうとしています。

悪趣味だ、贅沢だ・・・と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、世間で言われている一流のサービス、商品というものは、何かそういった「心地よい」雰囲気をまとっているような気がします。

だからお値段もそれなりにするのかな・・・と。

その何かを感じ取るために、多少値がはったとしても、できるだけ一流のものに触れようと日々がんばっていたりします。

また、使ったお金に対するリターンという観点で見れば、一流のものに近づけば近づくほど、リターンの方が使ったお金を上回る確率が高まるような気がします。

ということで、リスクヘッジの観点から見ても、選択肢として悪くないのかなと思っていたりします。
(具体例がないため、わかりにくくてごめんなさい。私の基本スタンスみたいなものとして受け取ってもらえれば幸いです。)

とは言うものの、世の中そんなにシンプルではなくて、例外もたくさんあったりします。

例えばビジネスパーソン。

一流と言ってもよいビジネスパーソンはたくさんいます。
そんなビジネスパーソンの給料を聞くと、驚くほど安かったりします。
(例えば、以前このブログで紹介した私の友人がそうですね。)

例えばシステム開発。
一流のベンダーに頼めば、一流の業務システムができるかと言うと・・・。

単純ではないからこそ、多くの失敗があり、そこがまた楽しかったりするわけですが、普段の生活を豊かにする取り組みは常に行っていきたいですね。

2007/09/14

ダメな会議の発言集

プロジェクトに参画すると、実に様々な会社や多くの方達と仕事をすることになります。

そのうち「この会社の仕事ぶりはすごいな。」であるとか、「この会社の社員の方はイマイチだなぁ・・・。」などなど、仕事のできる会社とできない会社が、幸か不幸か何となくわかるようになってしまいます。

例えば会議。

「がんばります。」

「現在、調整中です。」

「現在、確認中です。」

「とりあえず・・・」

「以前、説明をしましたが・・・」

「何とかします。」

数字を伴った具体的な見通しや期限に言及していない会話に終始する会議は危険。

例えば、システム開発の現場で、問題の原因説明ばかりで解決策をまったく提示しないコンサル&SEや「仕様だ」と言い張って対応を検討しない、「お客さんが決めてくれないとできない・・・。」と主張して、プロの目から取りうる手段の提案・提示ができない人達もNG。

と、事例を挙げればキリがない・・・と言えるかなと思います。

ということで、それぞれ個人が感じるダメな発言を集めるといろいろと活用できるのかなと思いました。

例えば、自分達がそのような発言をしていないかチェックリストとして活用する。
例えば、一緒に仕事をしていくパートナー会社を選定する時にチェックリストとして活用する。

会社のサービスレベルを向上させるには手っ取り早い方法なのかなと思いました。

追伸)
ダメな発言で溢れている会議でも、適切な質問や仕組みを用意すれば有意義な会議にすることができます。
ある意味プロジェクトマネジメントのノウハウの一つといえるかもしれませんね。

ただ個人的にこのようなノウハウを使用している時は、なんとも言えない空虚な気持ちになります。

このような場合、相手はお客様の立場ではなく自社都合であったり、自己保身をしていることが多いからです。

できる会社は、そのようなノウハウをわざわざ使わなくても適切な発言をしてくれるので、純粋に内容に集中できるんですよね。

とはいえ、長いプロジェクトでは最初はノウハウを使っていたけれども、適切な質問を投げかけ続けたり、仕組みの中で取り組んでもらうことで、そのうちノウハウを使わないでも対応できるようになる所もあります。

つまり、ノウハウと言ってもテクニックの一種なので、覚えてしまえば誰でもできます。
(今まではただ知らないだけだった・・・。)

誰でもできる・・・というと、「ホント?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、先ほどのチェックリストを例にすると、「書かれてあることはしない」と、全員が実践するだけで、プラスマイナスゼロまでは、持っていけると思います。

これと同じ様に、プラスに持っていくテクニックを活用すればいいわけです。

じゃあ、そのテクニックって?

と思ってくださった方は弊社ホームページのサービスをご覧ください。(笑)
テクニックの1つが商品として形になって販売されています。

ということで、久々に自社の宣伝をしてみました。(笑)

宣伝をすると全ての内容を懐疑的に見てしまう方もいらっしゃると思うので、ここで一つ補足。
宣伝はあくまで「追伸」からです。

「ダメな会議の発言集」は売り込みではありませんので、ぜひ実践してみるといいかなと思っています。
自分達も実践してみて、何か伝えられることがあったらお伝えしようと思っています。

2007/09/04

できる社長さんが行っているフィードバック

仕事をしていると、いろいろな商品、サービスの提案を受けます。

もちろん売り込みだけでなく、一緒に考えてくれませんか・・・という類の相談もあります。

この時、個人的に気を付けていることがあります。

それは、自己顕示欲を示そうとしないこと。

ちょっとわかりにくいので、自社を例にしながら話を進めて行きます。


先日、ある会社の研修で使ったシミュレーションゲームを興味のある方にお見せしました。

理由はただ一つ「拡販」です。

この時、いろいろな反応をいただきます。

もし自分がこのような状況で見せてもらう立場の時に、気を付けているのが、先ほどの「自己顕示欲を示さない」です。

自己顕示欲を示そうとすると、このような反応をしてしまいます。

「この部分はもっとこうした方がいいんじゃないの?」

自分の経験や知識をフル動員して、そのシミュレーションをもっと良くしようとします。

でもこのシミュレーションゲーム、お客様から「大成功です!!」と言われ、めちゃくちゃ喜ばれているシロモノなんです。

めちゃくちゃ喜ばれているものに手を加えるのではなく、むしろ現時点では「一番フィットするお客様はどこにいるのか?」を考えてフィードバックしてあげた方が相手は喜ぶのではないかと思います。

商品、サービスを目の前にすると、どうしてもその品質を上げようとしてしまいます。

なぜならば、個人的にとっても楽だからです。
なまじ経験や知識があるものだから、それを基に意見をしてしまいます。

一方、「一番フィットするお客様はどこにいるのか?」は頭を使います。
頭を使う上に、その内容に保証もありません。
自分の意見として考えるとリスクが大きすぎます。

したがって無難な品質に関わる話が多くなります。

でも相手にとって貴重な意見なのかもしれませんが、品質向上の話は危険なような気もします。

お客様が喜んでいるのに手を加えると、そのシンプルさやわかりやすさが損なわれたり、価値が見えにくくなったりする可能性があります。

日本の商品・サービスには過剰品質だと思うことが多々あるのですが、それを助長してしまう・・・。

だからこそ新商品ならいざ知らず、既に既存顧客がいて、その価値を十分に感じてもらっているのであれば、品質向上ではなく、お客様がどこにいるのかを考えてあげる方がいいのかなと最近思います。

このように考えるようになったのも、多くの社長さんに触れてきた経験からです。

商売人としてうまくいっている会社は、このような時に、まずお客様の顔を思い浮かべているような気がします。

「Aさんの所だったらいいかも」というような反応がきます。

常にお客様に喜んでもらうために・・・と考え、その情報を求めているような感じです。

一方、「こうした方がいいんじゃない」であるとか、「こうすれば、もっと売れるんじゃない」という話をしている時は、裏を返せば「こうしないと、私には売れない」という発言にも取れます。

でも実際、商品は売れています。(しかもめちゃくちゃ喜んでもらって)

このような会社は、よく言えば職人気質。
良い商品を作れば売れる・・・と頑なに信じて、品質向上に努めていますが、それは自己満足。

正直、市場やお客様の声を聞いているのかなと感じることもあります。

ということで、抽象的かつ個人的なまとめ。

現状を基に次のアクションをフィードバックしてくれる社長の会社は好調。
前提条件を付けて次のアクションをフィードバックしてくれる社長の会社はようわからん。

どちらも次のアクションの話をしてくれるので、全く前に進まない評論家とは違い価値があるのは確かです。
が、現状を基に話をしている方のほうが結果を出しているような気がします。
(実行のスピードを考えると、当然かもしれませんね。)

そして、私自身もそうなのですが、コンサル業界に長くいると後者になりがちになってしまいます。
(ここら辺が先日も書いた決断力に関係する所ですね。)

自分も価値あるフィードバックができるよう気を付けます。

2007/09/02

おもてなしの心とグッドデザイン

先日、友人の納車につきあい、あるカーディーラーを訪れた時の話です。

友人と話をしながら店内に入ろうとすると・・・

ガツン

入り口のドアにぶつかってしまいました。

よく見ると張り紙がしてあります。

「こちらのドアは締め切らせていただいています。」

左右あるドアのうち、右側半分が締め切ってありました。

「ドアにぶつかるなんて初めてだよ。」なんて話をしながら、中に入っていきましたが、このことについてちょっと考えてみました。

人が装置に対して何かを行おうとする時、次の4つの原則が守られていないと、それをスムーズに行うことができないと、認知科学者であるドナルド・A・ノーマンは指摘しています。

・可視性(次に何をすればよいか見ただけでわかる)
・対応付け(コントロールする手段とその結果の関係)
・概念モデル(経験の蓄積で出来上がった標準的なパターン)
・フィードバック(結果が直ちに明らかにされる)

今回であれば・・・

・可視性・・・ドアの手前に来ると、ドアが左右に開く
・対応付け・・・足を踏み入れると開く
・概念モデル・・・自動ドアの経験
・フィードバック・・・ドアが半分開かなかった

フィードバックの段階で何らかの事情があり、ドアが半分開かなかった。

これは何とかしなくては・・・。

ドナルド・A・ノーマンの指摘を出しながら、それっぽく小難しくしてみましたが、このような状態の時、訪れた方がドアにぶつかることなく店内に入れるように、あなたならどのようにしますか?

このディーラーの対応は可視性の所で、注意書きの張り紙を付けることで対応しようとしていました。

おそらく多くの方が、このような形で対応することを考えると思います。

しかーし、「おもてなしの心」や「相手の立場」に立てば、このような対応にはならないと思います。

そこで、もう一つ質問。

もしあなたが、高級車ディーラーで働いていたとしたら、どのようにしますか?

高級車ディーラーで張り紙はさすがにないですよね?

ではどうしたら良いのでしょうか?


考え中・・・。


考え中・・・。


考え中・・・。


ということで、私が考えた答えの一つはこれです。


「入り口のマットを半分(ドアが開くだけのサイズ)にする。」


入り口にマットがあれば、そこから入ろうとするのが普通です。
マットがあるのに、マットのない所から店内に入れるなんて思わないですよね?

だから、これをドアが開くサイズにして対応します。

先ほどの4つの原則で言えば「概念モデル」での解決ですね。

ということで、ここで伝えたかったことですが、個人的に「良いサービスだなぁ」と感じたり、気持ちがいい対応をしてもらった時というのは、「概念モデル」のレベルで対応してもらった時なのかなと思います。

「可視性での対応」と「概念モデルの対応」では決定的に違うことがあります。

それは、どれだけ頭に汗をかいたか。

概念モデルの対応になると、相手の立場に立って考えつくさないと対応策は思い浮かばないと思います。

だからこそ価値があって相手も喜んでくれるのかなと思います。

そんなサービスができるよう常に心がけていきたいですね。