2013/06/06

モノ作りの次に鍛えるべきは・・・

最近ある出来事を何人かに話した所・・・、
「そりゃしょうがないね。我慢するしかないね。」と言う方と・・・、
「そりゃヒドイ。何とかしないと。」と言う方・・・。

全く正反対の答えが返ってきました。
あまりにも真逆で面白いなあと思ったと共に、いつかどこかで見た風景だったので、今日はそんなお話を残しておこうと思います。

個人的には、これから世界で活躍する若い方達に何かのヒントになればいいなあと思って書きます。

早速ですが、ちょっとした私の過去の経験からクイズを出します。

中学生時代の実話です。(昭和だ。笑)

ちょうど1ヶ月後に体育祭が開かれることになっており、今日はクラスみんなで話し合って出場種目を決める日です。

先生に依れば「絶対優勝するぞ!」とのこと。
ということで、ここでクイズです。

■クイズ
1ヶ月後の体育祭で優勝出来る様に各生徒の出場種目を決めなさい。

<条件/ルール>
・一人一種目まで
・一種目の勝ち点は10点(三種目 x 10点で競う)
・競技順
1、100m走
2、100mハードル走
3、400m x 4人リレー

<参考情報>
・最初の種目(100m走)は足の遅い人が出て、後ろの種目にいくに従って足の早い人が出てくる。伝統的に最終種目の400m x 4人のリレーは花形種目で各クラス、エース選手が出場してくる。

・自分のクラスメンバーの100m走の成績は下記の通り
Aさん:20秒
Bさん:20秒
Cさん:20秒
Dさん:20秒
Eさん:15秒
Fさん:10秒


・隣のクラスメンバーの100m走の成績は下記の通り
Gさん:20秒
Hさん:20秒
Iさん:15秒
Jさん:15秒
Kさん:10秒
Lさん:10秒


さあ、どんなオーダーを組みましたか?
私はこんなオーダーを組みました。


1、100m走:Fさん
2、100mハードル走:Eさん
3、400m x 4人リレー:Aさん、Bさん、Cさん、Dさん

二種目で20点を取って逃げ切る作戦です。
相手が遅い順から並べてくるので、こちらは早い順で並べて勝とうとしました。


すると、先生がこう言いました。

「それはダメだ!」

???

何がダメなのかわからない私は先生に聞きました。

「先生、勝ちにいくんですよね?」

「そうだ。」

「じゃあ、なぜダメなんですか?」

「ダメなものはダメだ。」

・・・ということで、結局早い順ではなく、遅い順でエントリーすることになりました。。。
先生とごちゃごちゃしたやりとりをすると、これまで伝統としてリレーは早い選手が出てきたので、遅い選手は出せないとか何とか・・・。

(何だよ。これじゃあ話し合う意味がないじゃん。)

これまで通りの伝統、慣例に従って並べたら、おそらくリレーには勝てません。
それどころか半周以上の差が付けられそうです。

ということで、ルールの範囲内で出した答えだったのですが、それはダメだと・・・。


さて、ここまで読んできて、どのような感想を持ちましたか?

これが冒頭の話と同じで・・・

「そりゃしょうがないね。我慢するしかないね。」と言う方と・・・、
「そりゃヒドイ。何とかしないと。」と言う方・・・。

両方いるかと思います。


「そりゃしょうがないね。我慢するしかないね。」と言う方は、おそらく勝ちにこだわりすぎ、勝負はやってみないとわからないから、そんな所でゴチャゴチャ言うのはみっともない。
正々堂々と戦えばいいじゃん。
早い順で並べたら、ちょっと卑怯じゃない。

と、いった感想を持つ方もいるでしょうか・・・。

さて現実の話に戻ると、従来通り、遅い順でエントリーをしたウチのクラスは、みんな全力を尽くしました。
1ヶ月後の本番に向けて練習を開始。
リレーメンバーは完璧なバトンパスの練習をして、どんどん記録を削っていきます。
遂には本番直前に自己ベストを更新しました。

そんな中で迎えた本番。
各メンバーはベストを尽くし持てる力を全部出しました。

結果は・・・


全敗。


特にリレーは練習よりさらに自己ベストを更新しましたが、半周以上の大差を付けられ完敗。。。

結果は散々でしたが、終わった後に先生は言いました。

「結果は残念だったが、みんな良く頑張った。」
「良く頑張ったから、先生は後悔していない。」

うん、まあ、その・・・。。。

ここから2つほど教訓めいたことが残せそうです。

◆戦術で戦略はカバーできない
どんなに素晴らしい戦術(今回で言えばバトンパスなど)を実行しても戦略(遅い順にエントリー)がダメなら結果は出ない。

◆戦略を決める責任者が結果に責任を取らないと、まあ切ない。


教育の一環だから結果うんぬんよりもプロセスを大切にした方がいいでしょ・・・というお話もあるかと思います。

では、うさぎとカメの話で考えてみます。

カメさん視点で行けば、圧倒的な差があっても、諦めずに地道にやっていけば報われるよと。

一方、うさぎさん視点で行けば・・・手を抜いたら、負けることもあるよと。
相手の力云々じゃなくて、常にベストを尽くしなさいよと。

ここでのポイントは勝敗のカギは誰が握っているのか・・・ということです。
もちろん、うさぎさんですよね。

うさぎさんが手を抜かなければカメさんは勝てません。
自分の力で勝敗を左右できるのはうさぎさんです。

従って、どちらも「ベストを尽くしなさい」という教訓を残すお話にするのであれば、他人任せのカメさんではなく、うさぎさん視点の話の方がいいような気がしています。

実際の体育祭の話でもどうでしょう。

これだけベストを尽くしたのに勝てなかった・・・ああ努力してもムダだなと思う人がいるかもしれません。

一方、勝った方も簡単に勝てちゃった、努力しなくても結果出るし・・・となるかもしれません。

個々の力では劣るからこそ、チームで何とかしなければならない。
であるならば、ルールに従っている以上、出来ることは全てやって勝ちにいかなきゃ・・・。
自分達の力で勝敗を左右できる状態に何とかして持っていかないと!

ということで、「そりゃヒドイ。何とかしないと。」と言う方と話をしていると、面白いアイディアが出てきます。

リレーで合計タイムが10秒以上差があるのであれば、インコースかアウトコースかなどコースの選択権を与えてみてはどうだろうか?

などなど、伝統や慣例を損なわず、フェアな戦いが出来る方法はないか考える発想を持っていたりします。

ここからは偏見ですが、日本人はどんなに不公平でも与えられた条件、ルール、制約の中で手を抜かずベストを尽くしていることが多いような気がします。
そして、その中で素晴らしい結果を出している。
これってもの凄く良い長所ですよね。
基本的に諦めずにやり抜く人達が多い。

それだけに結果が出ないのがもったいないというか切ない。
戦術を完璧にこなせる人達がいっぱいいるだけに戦略が大事であり、そこの力は鍛えていかないと・・・ですね。

また一方で、制約を克服して勝ちすぎると、不公平だとルールが変更になる。
経済界でもスポーツ界でもあれやこれや・・・。

日本たたき・・・と言われることもありますが、往々にして日本人以外の人達は、いかにフェアで戦うか・・・という大義名分で自分達に有利な方に・・・と常に考えています。

日本人はルールに従うことに夢中で、ルールを作ること、変えることに無頓着すぎるような気がしています。

ムラ社会でやってきたと言ってしまえばそれまでですが、そのムラの維持が難しくなってきているのではないか・・・と感じているだけに、ルールや基準作りが出来るような人達が今後求められてくるのかなあと思っていたりします。
(というよりも、国内に限って言えば、そういった人達を受け入れられるだけの土壌作りというか価値観を認める社会作りというか・・・。)

左のプロフィールを見てもらうと分かる通り、私は法学部で有名な大学の法学部出身です。
法律も現実世界に合わせたルール作り、基準作りという意味ではよく似ていますよね。

・・・なのですが、そこで弁護士を目指して勉強している学生が・・・

「法改正があると、また勉強しなおさないといけないから法改正しないでほしい。」

と言っていました。笑

勉強が大変なのはわかりますが、法律の本質を理解しているかと言うと・・・。

モノ作りだけでなく、ルール作り、基準作りも出来る様になっておかないと、いつまでも勝てないよと。(というか勝たせてもらえないよと。)

「そりゃヒドイ。何とかしないと。」と言う方の発想力や行動力なんかを間近で見ていると、そんな危機感を覚えてしまいました。

主体的なリーダーシップを取るためにも、自分もこの辺が強くならないとなあと。