2006/10/04

専門家が陥る罠

A地点からB地点まで1時間で行こう。

こう言ってスタートする。

しかし結果は、1時間30分で到着。

何かがおかしい・・・。

どうすれば1時間で行くことができるのだろうか?

このような時に、その道の専門家に分析してもらうのは、1つのアプローチ。

歩くペースがだめなんですよ。

途中の信号に気を付けて下さい。

ここは人混みだから、別の道で・・・。

と原因分析を行なってくれるし、解決策も提示してくれる。

結果として次のチャレンジでは1時間以内に到着できる・・・と思う。

が、しかし。




このアプローチでは、イノベーションは生まれない。

問題が発生した時、ゼロベース思考で考えることができるか?

そして、「なぜ1時間で着くことができなかったのか?」ということを忘れて、「どのようにすれば1時間以内に着くことができるか?」という目標にフォーカスできるか?

何かのアクションを行なった後にゼロベースで考えるのは非常に難しい。

なぜうまくいかなかったのか?という原因分析を先にしたくなる。

が、しかし。




時間という限りある資源を有効活用するためには、まずは1時間以内に着くことができるかにフォーカスする。

そうすれば、歩くのではなく、自転車、車、タクシー、電車など新しい方法が思いつく。

このような方法が思いつけば、歩くペースなどの原因は関係がなくなる。

問題分析思考ではなく、問題解決思考になれるかどうか・・・。


これが出来ているのか、出来ていないのかが、顧客満足の分かれ目だと思う。

個人的な印象として、技術屋さんは問題分析思考の方が多い。
(その技術に精通しているから、どうしてもその枠内で解決しようとするのは仕方がないのだが・・・。)

だからサポートセンターに問い合わせると、「それは無理です。」というつれない返事をもらうことが多い。

で、その会社の他のソリューションで解決できたりする・・・。(笑)

これと同じ様に、何かの開発や取組をしていて問題が発生すると、まずは問題分析から入ってしまうことが多い。

車やタクシーなどの方法がスグに思いついて、実施しようとしても、自分はその分野に精通していないから実施に不安でしょうがない。

そして、まだ問題分析を行なっていないから、もやもやして気持ちが悪い。

だから車やタクシーで行くことに大きく反対する。

反対している間に時間はどんどん過ぎて・・・。

自分がコントロールできる範囲で何とかしようとするのは、当たり前のことだけれども、ここで欲しい情報は問題分析にかける時間はどれくらいか?ということ。

時間がかかる&問題を特定できないようであれば、やらない方がいい。

ということと、大きな理由がもう1つある。

それは問題分析をしてしまうと、それで解決したくなる・・・ということ。

つまり分析をして歩くペースが遅いということがわかった。

今度はこのペースで行けば確実に1時間以内で行くことができる・・・。

このことが明確になると、この解決策を主張する。

でも、その方法だと早くても50分。

車やタクシーのように15分で着くことはない。

そして、イノベーションは生まれない。




ゼロベース思考と問題解決思考。

この2つを備えている人材は、とても貴重であると思う。

自分が持っているスキルを超えて、全体的な視点で解決策を提示できるかどうか・・・。

深く掘り下げる能力と横に広げる能力。

そのバランスをいかに取るか・・・。

ひとつ言えることは、深さも広さもその基準は「お客様が求める水準を満たしていること。」

どちらか片方が欠けていてもいけない。

専門家と言われる人ほど、この横の視点に気が付いていない方が多いので、お客様が求める水準を満たす横の広がりを持つと、非常に大きな顧客満足を得ることができると思う。

だからこそ、この2つを備えた人材で組織作りを行なっていきたい。

そしてイノベーションを生み出し続けていきたい。

2 Comments:

Anonymous 匿名 said...

仰るとおりです。私などは、問題分析思考が強いように思います。っていうか、問題解析思考についての意識をほとんど持ってなかったような気がします。いつもためになるお話有り難うございます。

10/04/2006 7:39 午後  
Anonymous 匿名 said...

問題解決思考をするには問題を定義しなければいけません。(先日、ご自分でそのように書いてらっしゃったと思いますが?)その作業はすなわち問題分析。

最近、言葉遊びに終始して、中身のない議論が多いように思います。また結論のない投稿も目立ちます。

10/05/2006 3:59 午前  

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