2012/02/14

あるブランドで体験したこと


先週の休日に予備知識&情報なしにフラフラと時計探しをしました。


今使っている時計が3年連続修理(2年連続オーバーホール)という状態になってしまい、お気に入りだったのですが、やむなく探すことに。

いろいろなブランドを回ったのですが、各ブランド、特徴があって、とても勉強になりました。

その中の一つを共有しておこうと思います。

業界、業種に関係なく、これって大事なことかなと思ったので、ちょっとした仕事の参考になれば幸いです。



今回、欲しい時計は、20、30年、それ以上、末永く付き合えるようなものがいいなあと思っているので、モノだけでなく、ランニングコストや店舗の方達の対応も気にして見るようにしていました。

時計は人によって、ファッションやステータスシンボルになると思いますが、私の場合は完全に道具です。

仕事でLAMY2000の4色ボールペンを使っていますが、これの発売日は1966年です。



















2000年になっても古さを感じさせないデザインを・・・ということで、この名前が付けられたみたいですが、2012年の今になっても色褪せないどころか、シンプルで使いやすいボールペンです。

ドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエの名言「Less is more」を感じさせてくれて、自分にとっては、いつまでも使っていたいものです。

また、リフィルも規格化されており、簡単に手に入るため、ランニングコストもかかりません。



そんなLAMY2000みたいな、末永く使える道具が欲しいなあと期待しながら、店舗を回りました。

当然、予備知識も情報もないので、店舗に入り対応してくれた店員の方に、その旨をお伝えして何個か候補を持ってきてもらいます。

そこで自動巻きなる時計があったり、いろいろな発見があったのですが、どこの店舗でも必ず聞いた質問があります。



それは・・・

「オーバーホールの期間はどれぐらいですか?だいたい1ヶ月ぐらいです???」


もし、あなたがこの質問をされたら、どのように答えますか?




実は、この質問に対して、あるブランドを除く全てのブランドの回答がこちらです。


「そうですね。だいたい1ヶ月ほどお時間を頂いております。」


回答としてみたら、特に問題はないですよね。

ただあるブランドは違いました。


「そうですね。だいたい1ヶ月ほどお時間を頂いております。」と伝えた後に・・・

「一番最近の話ですと、2月7日にオーバーホールを終えて受け取られたお客様が、こちらにお持ち頂いたのが、1月18日でしたので、だいたい3週間ぐらいですね。」

「お客様には余裕を持って1ヶ月ほど・・・とお伝えしております。」


丁寧語?接客用語?ができない私が書き起こしているので、言葉遣いがこの通りかどうかは、かなり怪しいですが、内容はだいたいこんな感じです。



この言葉で2つ評価できる点がありました。



1、実例を教えてくれたので、1ヶ月の内容が判断できる。

1ヶ月がギリギリの1ヶ月なのか、バッファーを持った余裕のある1ヶ月なのかが判断できました。

どちらも所詮、口約束にしかすぎません。
その口約束に過ぎない内容も、実例、実際のアクションを教えてくれることで、口頭の内容がどういうことなのか具体的なイメージができます。



2、お客様に関心を持っている

オーバーホールの具体的な日付の話がさらりとできたということはお客様に関心を持っている・・・と思います。

この手のものは顧客データベースを見れば、すぐわかることです。

お客様に興味を持たず、処理・・・として扱ってしまったら、なかなか日付は覚えていないと思います。

そうではなく、お客様に注意、関心を持っているからこそ、データベースなどに頼ることなく、すぐに話ができたのかなと・・・。


この人だけかもしれず、店舗全体に行き渡っているかどうかはわかりませんが、少なくともお客様の顔を見て対応しているのかなと思います。




ということで、ちょっと抽象化してまとめると、ここのブランドは発言に責任を持っていることを示してくれました。

別の表現を使うならば、発言に一貫性を保つために実例を見せたと言うか・・・。

テクニックやスキル・・・という世界で見ると、「ああ、実例を見せればいいのね」となりがちだと思いますが、話はもう少し深いかなと思っています。

単純に実例を出せばいいという話ではないような・・・。



こちらは「20、30年、それ以上、末永く付き合えるようなものがいい」と始めに伝えています。

そうした時に、無責任な発言やコミットのない発言が続くようだと、安心できませんよね。

時計のことは何もわからないし、そうした不安を一つずつ取り除くためにも、こういった実例は助かります。



そのせいなのか、ここのブランドはこの後の説明も素晴らしかったです。

商品説明の際に、ブランドストーリーと絡めて、なぜこのデザインになっているのか?

このデザインは○○を表現している・・・みたいな話をして、ブランドの一貫性を伝えていたりします。

過去の連続が、未来の連続を保証するわけではありませんが、少なくともその一貫性を今後も続けていこうという気概を感じ、20、30年、それ以上・・・と考えている身としては安心しました。
(抽象的な話でごめんなさい。)

また、そんな話を聞いていると、イームズ夫妻(チャールズ・イームズとレイ・イームズ)の言葉を思い出しました。


















”人々が求める美しさは時代によって変わるが、求められる機能は普遍的である。”

その普遍的なものを守ってきたし、これからも守っていこう・・・ということが感じられたのは良かったです。

ファッションやステータスシンボルではなく、道具を探しているからこそ、道具の話をしてくれたのは良かったです。




ここのブランドは一貫して、こちらが期待している情報を伝えてくれました。


例えば、

「どういった人達が買っていくんですか?」

と聞いた時に、あるブランドはステータスシンボルの話をしていました。


おそらく実際に買い求める人達の話ではなく、私の見た目やこれまでのやりとりから判断して、同じような人達が買っている・・・みたいな話をしていました。
(見た目からの判断では、間違っていないんですが・・・私の置かれている立場が立場なので、それはちょっと違うなあと言う話になっていました。)



例えば、実際に腕にはめて鏡で見ている時に

「スポーティーで今日着られている服にも合いますし、とてもお似合いですよ。」みたいな表現で褒めてくれるブランドもありました。

確かに似合っているのは間違いないですが(←ごめんなさい。かなりナルシスト!!)、歳を重ねていった時にどうなんだと・・・。

その辺は、実際に買い求めた人達をたくさん見てきているわけなので、追加で教えてくれるとこちらも想像できるのですが、現在の話に終始してしまったり・・・。


「20、30年、それ以上、末永く付き合えるようなものがいい」、「ファッションやステータスシンボルではなく、道具を探している」という最初の方針に沿って、話を続けてくれるブランドは、ひとつだけでした。



そのため、最後も全然異なってきます。

すぐに買ってもらいたいために、為替変動による価格改定やモデルチェンジの話や在庫の話をしたり・・・と。

一方、例のブランドはそんなことはしません。

「20、30年とずっとお使いいただくものですから、いろいろたくさんありますので、他のブランドの時計も見て、ゆっくりご検討ください。」
「わからないことがありましたら、気軽にお越しください。」と言いながら、検討しやすいようにブランドブックみたいなカタログを渡されました。

(&時計を買う際に気を付けた方が良さそうな購入ポイントに関わる情報はこの辺に書いてありますよ・・・みたいな説明もしてくれました。)


ファッションやステータスシンボルになるせいか、このブランドが必ずしも一番良い時計、一番高級な時計を売っているわけではないのですが、ホスピタリティというかサービスは一番良かったです。



仕事では、方針、目的がずれるとえらいこっちゃ・・・なので、折に触れて確認しますが、今回はそのようなことはせず、最初だけです。

その言葉からお客様の立場に立たないと、その後の接客が全然変わってしまいます。


(各ブランドの店舗対応の比較をするためにずれていても、あえてそのままで・・・ズルイですね。向こうが質問してきたら、答えるつもりだったので、確認してくれたら評価も上がるのですが・・・。)




お客様の立場に立たないと、できないことっていろいろあるよね・・・ということを痛感させられました。



追伸)
買い物に行く時に、おそらく学生時代から今も、店員さんとは変わらない感じで話をしています。

が、最近、店員さんの態度が異なることに気が付きました。

昔は話をして仲良くなってくると、だんだんお互いくだけた感じになってくるのですが、最近はどんどん丁寧になっていきます。

で、振り返ると、昔はお姉さん、お兄さんと話をしている。
今は、下手をすると、年下の方が接客をしている・・・。

となると、こちらがくだけて来れば来るほど、下手なことはできず、どんどん丁寧になるよね。

うーん、歳を取りましたね。

リラックスしてもらうためにも、あまりくだけない方がいいのかもしれないですね。