2007/07/03

HPなし・取材厳禁・広告なしの繁盛店から商売の基本を学ぶ

最後の晩餐に何が食べたいですか?

こう聞かれたら、あなたは何て答えますか?

正直自分は困ってしまい、答えられないのだが、しいて言うならば「和食亭・磨匠で出されたものを食べたい。」と答えるかもしれない。

このお店、飲食店ひしめく激戦地・新宿でホームページもなく、取材を受けることも広告を出すことも全くしないにも関わらず、連日連夜、予約がなかなか取れないお店なんです。

とすると、さぞかし美味しいものが出てくるのだろう・・・と思われるかもしれませんが、料理は至って普通。
看板メニューや、絶対これは食べなきゃ・・・というオススメがあるわけでもない。

お店のつくりに凝っているわけでもなく、むしろコレという特徴がないので、他人にオススメしにくいぐらい。(場所もわかりにくいし・・・。)

そんなお店にどうしてハマッたのか?

実は、以前、あまりの盛況ぶりが気になって、店主の鈴木さんにお話をお伺いしたことがあるんです。

すると、やはり開店当初はお客様がこなかったらしい・・・。

鈴木さんは外でビラを配ったり、広告を出したり・・・。

また、飲食コンサルタントのコンサルティングを受け、助言に従い、新規メニューの開発や、流行を取り入れた個室を造るなど、それこそ昼夜休まず取り組んだそうだ。

でも、全く結果が出なかった・・・。

こんなに頑張ったにも関わらず結果が出ない・・・。
そんなある時、鈴木さんはこう思ったそうだ。

「他人に頼ったり、流行を追いかけるのではなく、自分がやれることを、徹底的にやろう。」

それ以来、売上が少しずつ上がっていき、現在のような盛況ぶりになったと言う。

結果には必ず原因がある。

とすると、ここには何か成功のきっかけがあるはず・・・と、そのテクニック(何をやったか)を知りたくなってしまうのだが、このお店、驚くほど特徴がない。

鈴木さんに何をやったのか、いろいろ聞いてみたけれど、飲食店として普通のことをしただけ。
回答も当たり前の回答が続き、なぜ繁盛するようになったのか全くわからない。

ということで、その話を聞いて以来、注意しながらお店を見ていると、気が付いたことがあります。

それは、本当に「自分がやれることを、徹底的にやっている」ということ。

例えばお出迎え。
挨拶の声は、相手の目を見ながらはっきりと、お辞儀の角度もきれいな45度。
お客様の足元に注意を向けながら、早すぎず遅すぎないエスコート。

店内は隅々まで掃除が行き届いている。(特にトイレなど水周りの綺麗さといったら)
箸や座布団は綺麗にまっすぐと置かれていて、乱れが全くない。

料理の出すタイミングや出し方、盛り付け方など、こちらを考えた対応をしてくれるので、とても気持ちがいい。

そして話を聞くと、料理の素材にも相当こだわっているらしく、例えば野菜なら無農薬野菜・有機野菜で、自分が現地で確認をして納得したものだけを使用しているそうだ。

野菜に限らず、そのこだわりは聞いていてびっくりする。
あまりにも凄いので鈴木さんに言ってみた。

「それだけこだわっているのなら、メニューなり何なりでアピールした方がいいじゃないですか?」

「それにそれだけ手間暇かけているなら、もう少し値段を上げても大丈夫だと思いますよ。」

「実際、そういうお店って多いし、それをウリにして固定客を掴んでいる所も多いと思います。」

個人的には、お店がもっと繁盛してほしいと思って言った事なのだが、鈴木さんの返事を聞いて、ハッとさせられた。

「そりゃ、そういうやり方もあるとは思うけど、オレはやらないね。」

「お客様に美味しいものを食べてもらいたい、安心で安全な食事をしてもらいたいと思えば、当然のことだろ。」

「その当たり前のことを、偉そうに言うだけでなく、それで値段を上げるなんておかしいね。」

「それにうちが契約している所はみんな美味しくて、安心、安全なものを食べてもらいたいって努力している所ばかりなんだ。」

「そうやって頑張っているのに、うちだけ努力しないで、みんなの努力で儲けちゃうのはおかしいだろ。」

「これまでのみんなの努力をムダにしないためにも、お客様と接点がある自分達は本当に頑張らないといけない。」

「野菜なんてすぐに作れるわけじゃない。それこそ長い時間をかけて育ててきた大切なものなんだ。」

「それが、自分達の接客態度が悪かったり、調理人の技術不足など、たった一瞬でダメにしてしまうんだ。」

「そんなことは、本来許されない。」

本当にハッとさせられた。

コートを脱いだり、荷物をまとめていたり、ドタバタしている所におしぼりを渡して、自分の仕事をおわらせようとしているお店がある一方、磨匠のように一息付いた絶妙のタイミングで渡すお店がある。

自分達のお店を繁盛させるためにしているのだろう・・・と思いがちだが、全然違った。

生産者達の想いを届けるために、自分達ができることをしている・・・。

この話を聞いて、お店を見ると、どこのお店と同じ光景が行われているのだが、その徹底ぶりに気が付くことが多くなった。

そのことを鈴木さんに話すといろいろと教えてくれた。

以前、飲食コンサルタントのコンサルティングを受けていた時には、お客様におしぼりを手渡した方が良いと言われて、言われた通りにしていたらしい。

そのようなテクニックばかりやっても、全然効果が出なかった鈴木さんは、「自分がやれることを、徹底的にやろう」と決意したのだけれど、決意をした後に、「なぜこれをやろうとしているのか?」、「なぜこれをやりたいのか?」、「なぜこれをやる必要があるのか?」と、自分の仕事を一つ一つ徹底的に突き詰めていったらしい。

そこから美味しい、安心なもの、安全なものを届けたいという想いがあることに気付き、少しずつ自分達の仕事を変えていったそうだ。

そんな鈴木さんの話の中で、特に印象に残った言葉がこれ。

「平凡の徹底と積み重ねが、非凡につながることをつくづく痛感したよ。」

含蓄のある言葉を頂いただけではなく、常に体現できるよう精進します。


追伸)
ということで、「和食亭・磨匠に連れて行って。」という人が周りに出てきそうなので、先に話をしておきます。

今回のお話はフィクションです。
和食亭・磨匠というお店は実在しません。

今回、起業から今まで仕事をしてきた中で、自分が実感していることを、飲食店を例にして物語風に書いてみたらどうなるだろう・・・ということで書いてみました。

ネット検索で「和食亭 磨匠」、「磨匠 新宿」と検索してくれた方がいらっしゃったら、こちらが伝えたかったことが何となく伝わったのではないかと思っています。

店主の鈴木さんと比較すると、まだまだ道の途中ではありますが、平凡の徹底と積み重ねを続けていきます。